【レポート】WILL2023@オンライン:「成果報告会」を開催しました

WILL2023@オンラインにファンドレイザーとして参加している岸本英嗣(きしもと・ひでつぐ)@MarriageForAllJapan と申します。


いよいよ2023年も残すところあと2週間程度となった12月13日、WILL2023@オンラインの成果報告会が開催されましたのでご報告します。

2023年7月から始まったWILL2023@オンラインもいよいよ大詰め、これまでの勉強、議論、練習の成果を示す時が来ました。


●うりずんチームの発表


最初に、認定NPO法人うりずんの事務局長・我妻(あづま)さんより、「わたしの未来、あなたの想いと、やさしい街へ」プロジェクトのご説明がありました。


【変化の法則】

まず、あづまさんからは、障がいがある人もない人も共に助け合える社会を実現するために(ビジョン)、医療的ケア児を単に預かるだけではなく、医療的ケア児が楽しく過ごし、家族が安心できる施設が足りていないという問題点のご説明がありました(以下の「変化の法則1」)。


そして、「医療的ケア児が楽しく過ごし、家族が安心できる施設が足りていないという問題点」の背景には、医療的ケア児とその家族が知られていない、可視化されていない、という問題点についてもご説明がありました(以下の「変化の法則2」)。


【相関図】

そして、それらの問題点を解決するためには、「生きるために必要不可欠なつながり」のみでは十分ではなく、「暮らしに活力や彩りを加えるつながり」も必要であり、医療や福祉のみならず、地域の団体や企業とのつながりが必要であるとの説明がありました(以下の「相関図」)。


【ロジックモデル】

そして、「医療的ケア児と家族が楽しく安心して過ごせるための必要なサービス・仕組みを作り続ける」というミッション達成のため、うりずんさんがめざす姿は以下の4つであるとのご説明がありました。

(1) 利用者の自立

(2) 家族の自己実現

(3) 医療福祉施設の地域間格差の解消

(4) 医療的ケア児と家族、とともに生きる地域の実現

具体的には、(1)の「利用者の自立」は、うりずんさんの活動の基本、根幹ではありますが、それだけではミッションの達成には足りません。

また、医療的ケア児支援法(※)の施行により公的支援が活発になった一方で、経済最優先の事業者もでてきているし、家族への支援は仕組化されていません。

そのために、これからは、利用者の自立を目的とする活動のみならず、以下のロジックモデル内の①の医療的ケア児の家族向けの活動、②「安全・安心・楽しい」を広める活動、③医療的ケア児と家族への理解を広める活動の3つを行っていくことのご説明がありました(以下の「ロジックモデル」)。

※正式名称は、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」


【予算】

しかし、うりずんさんでは、ほぼマンツーマンの人員配置であり、現在の事業を進めるだけでも公的支援では予算が不足しており、不足分を自主財源で埋める形でこれまでやってこられたため、新しいプロジェクトの財源が不足していることの説明がありました。

また、新しいプロジェクトは、医療的ケア児への直接的な支援活動ではないため、公的支援を受けることが難しいことのご説明がありました。


最後に、あづまさんから、医療的ケア児とその家族を取り巻く環境のみならず、支援施設の質の向上を目指す新しいプロジェクトを成功させるためには、うりずんさん独自の財源を充実させる必要があり、障がいがある人もない人も共に助け合える社会の実現のため、このプロジェクトの“志金”が必要であることのご説明がありました。


【感想】

その後、WILL2023@オンラインの感想として、うりずんの内尾(ななお)さんより、WILL2023に参加したことで、うりずんさんが思い描くこれからの全体像が見えてきて、そのために自分たちが何をしていくのかということを、自信をもって語ることができるようになった、とのお話がありました。


【“志金”調達計画】

次に、うりずんチームのトレーニーの松林(まつばやし)さんより、うりずんさんのプロジェクト達成に向けた“志金”調達計画のご説明がありました。


松林さんからは、うりずんさんのドナーピラミッド、ペルソナシートを踏まえて、“志金”調達計画のご説明がありました。

うりずんさんの“志金”調達計画は、他団体との合同ファンドレイジングや、金融機関と連携したファンドレイジングなど、地域のつながりを活用したとても魅力的な計画になっていました(以下の「うりずんチーム 志金調達計画 ポイント」)


【感想】

松林さんからは、最後に、WILL2023に参加しての感想共有がありました(以下の「うりずんチーム トレーニー感想」)。

地元金融機関に勤務する松林さんと、うりずんさんの出会いはすばらしいご縁だったと感じました。


【ファンドレイザーチーム】

さらに、うりずんチームのファンドレイザーである岩井(いわい)さん、矢野(やの)さんから、それぞれWILL2023の感想の共有などがありました。


【理事長降臨】

また、うりずんの理事長である(鹿の帽子をかぶった)高橋(たかはし)さんからもお話がありました。

高橋さんからは、「どうしてこの家族、このお子さんだけが苦労しなければいけないのか」という理不尽さが活動の原点であることの説明がありました。

また、現在は医療的ケア児の外出に力を入れているものの、今後は、きょうだい児さんや18歳をすぎた医療的ケア児者の支援、ご両親が介護できなくなった後や成人後のグループホームなど、地域で最後までケアができる仕組みを作り、どんなお子さんも生きていてよかった、暮らしてよかったと思える地域・社会になるという目標についても、力強く共有いただきました。


●こども未来チームの発表


次は、NPO法人こども未来の運営する「こどもみらい園」で勤務する津山(つやま)さんより、「どんな障碍があっても大丈夫、京都府ショートステイプロジェクト」のご説明がありました。

【現状と問題】

まず、つやまさんからは、全国の医療的ケア児の数が2005年の約1万人から2019年には約2万人と、15年間で1万人増加しており、2017年の京都府内の医療的ケア児数が295名であることの報告がありました。

そして、当事者である医療的ケア児のご家族が最も利用したいサービスとして、その約70%の方が「緊急一時預かり支援」と回答されており、緊急的に医療的ケア児の預け先を求める声が多いという調査結果のご説明がありました(以下の図を参照)。


それにもかかわらず、京都府内全域のショートステイ施設の一日の受け入れ可能人数が25人と考えられ、預け入れ可能数が圧倒的に不足していることや、さらにショートステイ施設でも受け入れには一定の条件が課されるなど、実際に利用することも困難であるという問題のご説明がありました。


【変化の法則】

次に、つやまさんからは、そのような問題の真の原因は、「当事者が気軽に安心して預けることができるサービスや場所が不足していること」であり、その点を解決することで、医療的ケア児やそのご家族が生きやすくなる社会を作っていく好循環が生まれることのご説明がありました(以下の「変化の法則」)。


【相関図】

つやまさんからは、先行して類似の問題に取り組んでおられる「社会福祉法人あいの実」さんや、「一般社団法人あまね」さんの取り組みを参考にしながら、京都府の福祉サービス、医療サービス、地域社会と連携して問題解決に取り組んでいくことのご説明がありました(以下の「相関図」)。

そして、先行事例の調査と、その成果の共有をはじめとした活動をこれから行っていくことについてもご説明がありました。


【ロジックモデル】

最後に、これからこども未来が取り組んでいく目標として、現状はこども未来として3つの事業所を運営しており、通所、訪問という日中サービスへの対応はできているものの、さらにショートステイ事業を始めていくことのご説明がありました。

そして、その第一歩である2024年は、①現在の事業の利用者調査をして、利用者の実態を把握していくこと、②あいの実さんやあまねさんという先行事業者の視察調査などからまずは始めていくことのご説明がありました(以下の「ロジックモデル」)。


【志金のつかいみち】

そして、具体的な“志金”のつかいみちとしては、医療的ケア児とその家族を支えるための活動に使うこと、具体的には、先行事例の視察調査費や、それらによって得られた成果などの報告会や勉強会をすることで多くの人に理解を求めて共感性を高めていく活動に使うこと、さらに、ショートステイ施設建設資金の積み立てに充てることのご説明がありました(以下の「志金のつかいみち」)。


【感想】

最後に、つやまさんからは、半年間のプログラムに参加した感想として、当初は漠然と資金が得られるかと思って参加したものの、実際に参加して、課題を整理することで取り組む問題が大きいことなどに気づいた、そして、一つの目標に向かってやっと歩けるようになったことが成長だと感じている、との感想のご共有がありました。


【“志金”調達計画】

次に、「どんな障碍があっても大丈夫、京都府ショートステイプロジェクト」を進めていくための“志金”調達計画について、こども未来チームのトレーニーである俣野(またの)さんからご説明がありました。


またのさんからは、ショートステイにかかる費用として最低でも1億円が必要になることを踏まえ、そこから逆算した2パターンの調達計画についての説明がありました(以下の「調達計画」)。

具体的には、政策提言に重点をおいて補助金で資金の大半をまかなうことを目指すパターン1と、1億円のうち20%を自己資金として積み立てし、残りの80%は金融機関からの融資で獲得するパターン2です。


2つのパターンのうち、パターン2については、以下の計画で進めていくことの説明がありました(以下の「5年間の調達計画」)。


【感想】

またのさんからは、最後に、WILL2023に参加しての感想共有がありました(以下の「WILL2023@オンラインに参加しての学び・感想」)。

津山さんと高校の同級生といった偶然をはじめ、またのさんとこども未来の出会いもすばらしいご縁だったと思いました。


【ファンドレイザーチーム】

さらに、こども未来チームのファンドレイザーである山本(やまもと)さん、岸本(きしもと)ひでつぐ、岸本(きしもと)なおこさんから、それぞれ計画の補足やWILL2023の感想の共有などがありました。


●参加者のみなさまより


さらに、本日の成果報告会にご参加のみなさまから感想などのシェアがありました。


●最後に


それぞれが、まさに半年間の成果を持ち寄った大変充実した成果報告会だったと思います。

ただ、この成果報告会は一つの通過点であって、ゴールではなく、やっとスタート地点に立つことができたに過ぎません。

今回の成果報告会が、どんな人でも安心して暮らしていくことができる社会に向けてかけがえのない活動をされている、うりずんさん、こども未来さんのますますの発展につながることに期待するとともに、私もファンドレイザーとして今後も尽力していきたいと思います。



【参考】WILL2023@オンライン:「成果報告会」参加者の声


・このプロジェクトが金融機関側にも変容の起点になりますように。

・うりずんの資料が見やすくてキレイで印象に残りました。

・医療的ケア児を取り巻く課題、「変化の法則」「相関図」というまとめ方。

・最近中に籠っていて薄れていましたが、ソーシャルビジネス支援の重要性を再認識いたしました。オール栃木を組んでいただきありがとうございました。今後も頑張りますので、ご指導をよろしくお願いします。

・医療的ケア児支援の大変さがよく理解できた。チャレンジしている皆さんに頭が下がる思いです。トレーニーのお二人とも地元の団体を支援して支えていきたいという気持ちが十分伝わってきました。

・まず、京都信用金庫さんのように金融の方々がこんなにソーシャル活動を推進をされていたことをこれまで存じ上げず、とても可能性を感じました。私募債の活用もそうですが、NPOの資金調達として「寄付だけ」ではない様々な志金の調達は大変勉強になりました。

・WILL2023の活動のこと、知ることができてよかったです。京都信金の活動もよいですね。

・木村さんの進行を挟みながらの発表が印象的でした。Webページを活用した発表もこの枠組み自体がどのようなステップを踏んで進んできたのか(「社会を変える」計画の検討や関連する分析、図式化した資料の作成)もわかりやすく、かつ発表団体としても負担が大きすぎない形だなと感じました。

・トレーニーとして参加させていただきました。社会課題解決を目標にする法人としては、社会の中での役割を明確にすること、ミッションを決めて合った活動、成果を決めることなど、考え方を学びました。今回の学びを金融機関に勤める立場として、今後の事業者への支援に役立てていきたいと思います。

・地域の金融機関の方々が、社会課題解決に関わる地域の非営利団体の支援に、金融の知識のバックグラウンドを活用して参画している様子を拝見しますと、ファンドレイジングスクールにて、講師の方々が説明していた、ファンドレイジングには金融機関からの融資を得ることも視野に入れることが昨今は必要ということを認識できました。ファンドレイザーとして参画しているファンドレイジングスクールの修了生が、本年も参画させていただいて、悩んだ様子を見ますと、昨年参加させていただいた経験を元に、参加をお勧めしてよかったと感じました。障碍者の親御さんたちにとって、「親なき後の障碍者の我が子の生活」がどちらの支援先でも大きな気がかりで、そのために活動なさっていることが理解できました。(私が介護ヘルパーとしてかかわっている障碍者の親御さんとまったく同じ懸念点でした。)

・社会的な課題を解決すると思いながら活動を実施しておりますが、このようなお話を聞くと弱者と言われる方たちをもっともっと応援することが大事です。資金面だけじゃない、やはり人は人で変わると思います。そのような人間に1ミリでも近づいていけますように、、、感じた次第です。

・知らないことばかりで大変勉強になりました!ありがとうございました!

・寄付で資金を募る手法、またそのための考え方や事業分析の手法が非常に参考になった。

・意図せずだと思いますが、両支援先とも医ケア児を対象としているということで、考えさせられることが多かったです。本来(?)なら、行政・国がもっと支援すべきことだよな~なんてことを感じながら、このような難しい課題にチャレンジしていることがすばらしいと感じました。